メールのエンベロープ From: を見て、次のリレー先 SMTP サーバを変更するような設定をしたい。例えば、組織内の foo@example.com からのメールは送信リレーサーバ1へ、bar@example.com からのメールは送信リレーサーバ2へ振り分けるといった設定を行いたい。
利用例としては、ライセンス数制限のあるメールセキュリティアプライアンスを、一部のユーザに対してだけ適用したい場合に使う。他にも、大学などで教職員ユーザはセキュリティポリシー緩めのメールサーバへ、学生は厳しめのサーバへ転送したいなど、応用方法は様々。
設定項目としては、sender_dependent_default_transport_maps と sender_dependent_relayhost_maps がある。どちらを使っても同等の動作を実現できるが、少し書式が異なる。
1. sender_dependent_default_transport_maps を使う場合
/etc/postfix/main.cf:
sender_dependent_default_transport_maps = hash:/etc/postfix/sender_dependent_transport
/etc/postfix/sender_dependent_transport:
@example.co.jp smtp:[リレーサーバ1]:25
@sub.example.co.jp smtp:[リレーサーバ2]:25
メールの送信者が foo@example.co.jp の場合はリレーサーバ1に、bar@sub.example.co.jp の場合はリレーサーバ2に送られる。
この設定は、default_transport (デフォルト値: smtp) をエンベロープ From: 次第で上書き変更するというものである。上記のような書き方もできるし、master.cf で別の transport を定義しておき右辺に使うことも可能。
2. sender_dependent_relayhost_maps を使う場合
/etc/postfix/main.cf:
sender_dependent_relayhost_maps = hash:/etc/postfix/sender_dependent_relayhost
/etc/postfix/sender_dependent_relayhost:
@example.co.jp [リレーサーバ1]:25
@sub.example.co.jp [リレーサーバ2]:25
これは relayhost の設定を From: 次第で上書きするという機能なので、テーブルの右辺は relayhost を書くときの形式でなければならない。つまり、 transport:host:port の形式ではなく、host:port だけの形式となる。
ただし、「この情報は relay_transport、default_transport および transport(5) テーブルで上書きされます。」とのことなので、transportテーブルを併用する場合は思った通りに動作しないかもしれない。